09 内覧のお客さん2組目

●ポイント
急いでいるお客さんもいて、内覧の日取りを決めるのも運命の分かれ目とも言える。また、営業さんのタイプも、口数の多い人の方が良い場合もあるし、反対にポイントのみをさりげなく後押しするタイプの方がいい場合もある。今回、騒音ということで高速道路の件は確認事項だったのだが、きちんと伝えているところも注意すべきところと言える。

 売契約を不動産会社と結んだのが11月上旬のこと。そして、気がつくともう年の瀬が迫っていた。来年頑張ろう、そう思いながら年末を迎えたところに、営業さんからの連絡が入った。

 「12月の30日か、31日のどちらかで内覧希望の方がいらっしゃるのですが・・・」とのこと。

 こちらも共働きで年末までドタバタし、大掃除もままならない状況で、内覧とはとても・・・と思い、「難しいです」と勝手な断りをしてしまった。せっかくのご縁が、とも思ったが、あまりにも非常な時期の内覧だ。担当さんも「そうですよね・・・。」とすぐに承知してくれ、連絡してくれた。

 そのまま、正月を迎え新年の慶びと、挨拶まわりで三が日を終えた4日のこと。またしても一本の電話が営業さんから入る。

 「年末にご連絡いただいていたお客様から、やはり是非お宅を内覧したいという方がいらっしゃいます。早急に、ご都合聞かせていただけませんか?」と、とても焦ったご様子で、その気迫にも負けて松の内もあけやらぬ最初の土曜日に来てもらうことにした。

  そして、正月にゆるみきった室内を整頓し、来るべき2件目のお客さんを迎えることになった。

 ご夫婦でみえたそのお客様は、それぞれが事業を起こしていらっしゃるとのことで、とても身奇麗でお金持ちそうに見えた。そして、「やっぱり、いいわ♪」という感じであちらこちらを見て回っていた。

 担当営業さんは、あれこれ口出しを一切せず、お客さんを気にかけながらも、自分もゆったりと見て回りながら、窓を開けては「いいですねーこの開放感。」と言ってみたり、「日当たりも最高ですね〜」とか「あ、ここも収納なんですね!」とか、本当にさりげなく呟いていた。

  あれやこれや「ここがいいんですよ。」「こんなところがオススメなんですよ。」などと、うるさく言われるよりも何よりも説得力のある呟きだった。

 一通り見終えたあと、窓のところで「高速道路が近いですが、窓を締めれば全く音もしませんね。」と力強く言って、内覧が終了した。 否、終了しかけた。

 「最後に、ちょっと駐車場に車を停めてみてもいいですか?」と、奥様からの申し出があった。 車高の関係で、地下駐車場の坂道で鼻先をこすらないかどうか、が心配だそうだったのだ。

 駐車場に案内し、我が家の車を出して横に停めて、お客さんを待った。 程なくして、駐車場の坂を優雅に滑り降りてきたのは、深いワインレッド色のポルシェだった。

 急に、我が家の国産車が恥ずかしくなったが、ここでジタバタしたところで何も起こらない。ので、黙って見ていた。

奥様の車の取り回しも美しく、するすると車庫にも入り、全く問題ないことが分かって安心されていた。そして、その場でお見送りをし、連絡を待つことになった。

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